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映画の感想 

久しぶりに映画の感想でも書こうかと。




ダニー・ボイル「28日後」

序盤に長く時間を割いて「荒れ果てて完全に無人のロンドン」という衝撃的シーンを見せ付けてくる。
大掛かりな仕掛けで一気に世界観に引き込まれるが、主人公が生きている人間と出会ってからはどんどん話が小さくなっていき、それに合わせてこの映画が本当に言いたいメッセージが徐々に浮き彫りになってくるという構成は面白いと思った。

個人的にはこの手の映画は大好物。ゾンビ映画ではあるのだけど、この映画に登場するゾンビは銃で撃てば簡単に死ぬし、別に不死身というわけでもない。凶暴で理性のない人間と言っても過言ではないくらいだ。「凶暴性を媒介するウイルス」によって暴徒と化した人々が物凄い勢いで襲い掛かってくる。やたら体のバネをきかせた躍動感溢れる動きをするから恐いってレベルじゃない。

中盤から登場するイギリス軍人のとる行動をはたして「狂気」と切り捨てることができるのか。男しかいない状況が続いているところへ突然女が現れた場合、即物的な快楽を求めてしまうのは至極当然の現象だと思う。異常な状況で保つべき理性とは何か、それにどれだけの意味があるのかというところを考えさせられる。

少なくともオレは軍人達の行動も「仕方ない」とさえ思ってしまった。少し飛躍してしまうが、そこで「種の保存」を考えてしまった時点で残された道はただ一つしかない(もちろん女性の人権を無視するというのは論外だが)(確か「復活の日」という映画でも似たような状況になっていたと記憶している)。
異常な状況にさらされたとき、その人の人間性が容赦なく試されてしまう。ついでに言うなら、「仕方ない」というオレの発想自体もこの映画で試されていたわけだ。ショック。

生きるために「人」を殺すことができる暴力という論理を飲み込むことができるのか。それに身を委ねたら「人間」ではない?
果たして未来に希望はあるのだろうか。

DVDの特別版で観たわけだけど、特典で収録されている「最後に大量のゾンビが主人公達のいる洋館に雪崩れ込んでくる」ラストの方がよっぽど「映画っぽい」と感じた。そこが一番の消化不良。
結局メッセージそのものはマンガ版の「ドラゴンヘッド」によく似ているので、気になる人はそちらもチェックするといいんじゃないでしょうか。つうかほとんどそのまんまだ。だからといってこの映画がつまらないとは言わないし、むしろ良い映画の部類に入ると思う。
ただし中盤からの展開が精神的にかなりキツく、オレも途中で観るのをやめようかと思ったくらい。その山場を越えれば非常に気持ちの良いラストを拝めるので、未見の人には是非とも頑張っていただきたい。


黒澤清「カリスマ」

鑑賞後に感じる不安感は異常。

大人の寓話という感じか。この人の映画は本当にコメントに困る。
それぞれがそれぞれの正義しか見ていない。自らの正義に固執している。しかしそれは個人間の人付き合いはもちろん、現代社会のあらゆる場面でも同じことが言えるはずだ。

何かが特別で、何かが平凡だなんてことはない。あるがままの状況になすがままに身を委ねること。ただそれだけ。
この考え方は非常に唯物論的で好きだ。劇中に「世界の法則を回復せよ」というセリフがあるが、オレはそのままの意味で捉えさせてもらう。

混沌とした個人間の価値観の相違や勝手な思い込み、既成概念に捕らわれることなく、ただそこに「ある」事実と対峙すること。もっとも根源的で感覚的な「他との関係のあり方」が失われた現代においてそれを取り戻すには何が必要なのか。その答えがあのラストなのだとするととてつもない恐怖だ。

人によって好みはもちろん解釈が分かれる作品だとは思うが、何はともあれひとまず観ることをオススメする。


大友克洋「MEMORIES」

それぞれ30分程度の3本立てのオムニバス映画。
それぞれ全く毛色の違う作品になっていて最後まで飽きさせない。いい満腹感。

当時はまだ手描きのセルアニメなんだということに観終わってから気付き、改めて日本のアニメの水準の高さを思い知った。大友克洋、すごい人だ。こりゃ世界が注目するわけだ。
特に気に障った部分もなく書くこともないのでスルー。


堤幸彦「新生・トイレの花子さん」

なんでこんな映画ができてしまったのかと小一時間問い詰めたい。
子供向けホラーと言ってもここまで脚本が適当な映画は久しぶりに観た気がする。最終的に誰が主人公なのかハッキリしなくなっていた事にはただ驚くしかなかった。

後にトリックのスペシャルに「ウニャニュペイギュウリュ星人」として出てくることになる人形が出てきてしまった時点で笑うしかなかった。もうちょっと上手い流用の仕方ってものがあるんじゃなかろうか。
木製自動ドアとかも爆笑シーンでしかないので恐怖もクソもない。日本人形=恐いみたいな図式がまかり通っているのがまず分からないので、この映画のキモの部分をスルーするしかなかったオレはどうすればよかったんだろう。この監督特有の過剰な演出もどうも古臭く感じられて興が殺がれることこの上ない。
時代が時代だからCGのヘボさには目をつむるとして、何か見るところがあるとすれば登場する女の子達の「軽くちょっと超展開があれば百合もありえなくない」と感じさせるギリギリの関係くらいのもんだ。

そしてそれ以上に声を大にして言いたい事は、こっくりさんのシーンのエロさがとんでもないという事。そこだけは必見。まったくけしからんな。


メル・ギブソン「アポカリプト」

一つの映像体験としてチェックしていてもいい作品。

ごまかしのない世界観の緻密な作り込みに感激した。オレは別にマヤ文明に明るいわけではないから、厳密な時代考証ができているかどうかという点では何も言えない。しかし映画が始まった瞬間から一気にその世界に引きずりこむ説得力のある映像を作り上げたマンパワーは純粋に評価に値すると思う。

結局何が言いたいのかというテーマはよく見えずに終わってしまったが、小説でも漫画でもなく映画としてマヤ文明を表現したことに意味があると思う。極力CGを排し、俳優の生のアクションで語られたからこそ実現したリアルさだ。葉っぱを使って即席の吹き矢を作るシーンなど本物のマヤ人にしか見えない。
物語というより記録映画のような、「ノンフィクションなんじゃねえの?」と錯覚してしまいそうなフィクション。予算あるんだな。さすが大スター。

終盤にチョロっと出てきただけのスペイン軍の衝撃といったらなかったね。文明の落差からくる違和感は尋常じゃなかった。その違和感こそ、それだけ映画の世界に引き込まれていたという証明になっているのではあるまいか。
スプラッタがダメな人は観ない方が身のため。


マイケル・マン「マイアミ・バイス」

考えなしに観ても無問題な映画。びっくりするほど中身なし。なんとなくカッコイイ。ただそれだけ。
ぼんやり観てるといつの間にか映画が終わってるという意味ではハリウッド的でよろしい。オレの好きなタイプのハリウッドではないが。

話の縦筋が変わりまくるという謎の構成。密輸組織に通じている内通者を捕まえるはずが、いつのまにか中ボスを捕まえることになり、その後せっかくだからラスボスを倒そうぜみたいな展開になったのに、最終的には中ボスを撃ち殺してラスボスの秘書兼愛人の女を逃がして終了、みたいな。なにか忘れていることがたくさんあるけどフロリダ的ノリで華麗にスルー。
中だるみ?整合性?伏線?なんだそれは。パイのトッピングにしては気が利いてるな!HAHAHAHAHA!

とりあえずこの映画を観ると、いくらディズニーワールドのある地だと言われようがフロリダには絶対行かないゾと固く決意できること請け合いです。治安悪すぎ人死に過ぎ。警察がマフィアと大して変わりないのが絶望的すぎる。


おしまい

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